二上山は大阪府と奈良県の境目に位置する、ラクダの背のような二つの頂である南の雌岳(約474メートル)と北の雄岳(約517メートル)を持ち、美しい姿でそびえている太子町のシンボルといえる山です。

 二上山の特徴的な山容が形作られ始めたのは、今から2000万年前に始まる火山活動によるものでした。およそ1300万年前まで続いた火山活動では多くの鉱物が噴出し、その中の溶岩の一部はサヌカイトとなり、火砕流の一部が冷えて固まったものが凝灰岩となりました。火山によってできた山はその後、隆起や沈降を繰り返し、河川の侵食により削り取られ、約1万年前に現在の姿となりました。

 かつては、「ふたかみやま」とも呼ばれ、万葉集にも詠われるなど、数多くの歴史のエピソードに彩られた山です。桜をはじめ、アセビやハギ、アジサイなどの花が咲き、自然と親しめる絶好のポイントであり、登山初心者でも気軽に楽しむことができます。また、雌岳山頂からは大阪側と奈良側の両方を360°見渡すことができるパノラマが広がります。

関連資源・イベント

岩屋

奈良時代に造られた、大小2基から成る石窟寺院。大きい方の石窟は幅7メートル、高さ6メートルにも及びます。鹿谷寺と共に日本で唯一の大陸風の石窟寺院です。


●鹿谷寺跡

凝灰岩の岩盤を彫り込んで造られた大陸風の石窟寺院。寺院の中心部には十三重の石塔と三尊仏座像を線彫りした石窟が残っています。


●万葉の森

二上山の南西、登り口から雌岳にかけて広がる森の中に、史跡を巡る園路や広場などがあります。さざんかや桜などの花々を楽しむことができます。


●屯鶴峯

屯鶴峯は太子町と香芝市の間にある、凝灰岩の白い奇岩群のことです。千数百万年前に二上山の火山活動によって火砕流や火山灰が堆積し、のちの地殻変動や風水による浸食によって現在の姿になりました。凝灰岩の白い岩肌と濃い緑の対比が、遠くから眺めると鶴が屯しているように見えたことから、この名前で呼ばれるようになりました。


大津皇子の墓

異母兄弟ながら、ともに天武天皇の皇子であった大津皇子と草壁皇子。二人は有力な皇位継承の候補でありましたが、天武天皇の没後、我が子草壁皇子を推す皇后、のちの持統天皇によって仕組まれたといわれる政治的陰謀によって、若くして処刑された大津皇子が雄岳山頂に葬られたとされています。


●古代池

古代池には様々な生物が生息しており、絶滅危惧種に指定されているカワバタモロコが確認されています。カワバタモロコはコイ科に分類される淡水魚の一種で、全長は3~5センチメートル程度です。また、隣接する古代池広場には、書家である榊莫山の歌碑もあります。


●サヌカイト

二上山付近で多く採れたサヌカイトは、石器時代から弥生時代にかけて利用されていた鉱物です。砕くと断面が鋭くなるため、矢じりや石器、刃物などを作るのに使われ、大変重宝されていました。とても固く、たたくと「カンカン」と高くきれいな音がすることから、カンカン石とも呼ばれています。


●岳のぼり

毎年4月23日は楽しみながらやまの自然を守る「岳のぼり」が開催されています。その歴史は深く、昔は山頂でごちそうを食べながら新緑を楽しむ行事でしたが、今では清掃しながら登山を楽しみ、地域の人で賑わう一日となっています。